九州大学演劇部の新歓公演で上演しました。演劇の脚本はこれが初めての作品です。
*上演希望の際はcontactよりご連絡ください
登場人物
ホイップ : 女、18歳
くーちゃん : 男
ママ : 女、ホイップの母親
ホイップの部屋 上手はけに台所 下手付近に玄関
中央にテーブル、その上にくまのぬいぐるみ
ホイップは床に寝ころび携帯ゲーム
くーちゃんは座ってホイップを見つめている
普通の光景に見えるが、ホイップはアイドルの衣装を着ており、
それだけが違和感
ホイップ:くーちゃん
くーちゃん:なあに
ホイップ:おなかすいた
くーちゃん:晩御飯にしよっか 何が食べたい?
ホイップ:うーん…和食
くーちゃん:わかった
くーちゃん台所に向かう
くーちゃん:できたよ
くーちゃん一人分の器と箸を持って台所から出てくる
テーブルに置く
くーちゃん:はい
ホイップは食べようとしない
くーちゃん:食べないの?
ホイップ:猫舌だからちょっと冷ますの
くーちゃん:そうだと思って、既にちゃーんと冷ましてあるよ
ホイップ:すごい! くーちゃん気が利く
ホイップ食べる 麺料理
くーちゃん:おいし?
ホイップ:うん 美味しい
くーちゃん:よかった~ 今日のは自信作だからね
ホイップ:でもさ
くーちゃん:ん?
ホイップ:…味噌ラーメンって和食かな?
くーちゃん:え、違うの
ホイップ:たぶん
くーちゃん:天下の味噌だよ? 味噌を和食として認めてくれないんだ
ホイップ:いや、そういうことじゃ…
くーちゃん:味噌なしに今の日本が成り立つと思うの?
ホイップ:ごめんねくーちゃん、味噌ラーメンは立派な和食だよ
くーちゃん:それでよし
ホイップ黙ってラーメンをすする
くーちゃん:もう時間だから帰るね
ホイップ:うん
くーちゃん:食べ終わったお皿は流しに置いといていいからね この前洗ってくれたのは嬉しかったけど、結局僕が洗いなおす羽目になったからなあ 家事まったくできないんだもん
ホイップ:ごめんね
くーちゃん:でも、そんなところが可愛い
ホイップ:…
くーちゃん:じゃあ、また明日ね
ホイップ:くーちゃん
くーちゃん:なあに
ホイップ:…くーちゃんは優しいね
くーちゃん:だって、僕はホイップちゃんのマネージャーだから
唐突に天神の雑踏が鳴り響く
二人はゆっくり立ち上がり、
テーブルの上のものを手に取り歩き始める
ホイップ:あれは確か、3か月前くらいだった
二人、はける
しばし雑踏のみ
ホイップがラジカセとかばん、
段ボールに「ホイップ♡」と書かれた看板を持って出てくる
セッティングしてラジカセのスイッチを入れると、曲が流れ始める
ホイップ:(歌)
今日は なぜか なぜだか 眠れないの
ねえ 素敵な子守歌 歌ってよ
誕生日プレゼントは一緒に眠れる
くまだったらいいのにな
ホイップクリームが大好き
甘くて ふわふわ やっぱり 大好き
キュンと甘いスイーツだけを食べてたい
だけど き・き・きっとママに怒られちゃう
さあさあ みんな一緒に踊ろう
き・き・きっと幸せになる
世界みんなの人気者 ホイップ
くーちゃん、歌の途中で色紙とペンをもって出てくる
少し離れたところで手拍子
歌に合いの手を入れる
ホイップ:ふわふわ生クリームに埋もれて死んじゃいたい☆ 全力でー!
くーちゃん:呼吸困難☆
ホイップ:いつでも会える路上ヒロイン、ホイップだよ☆
くーちゃん:ホイップちゃーん!
ホイップ:今から、ホイップのサイン会するよー!
みんなに書いてあげるから、焦らずに一列に並んでね!
くーちゃん:はーい!
くーちゃん、ホイップの前に立つ 近すぎる
ホイップ、一瞬たじろぎ、ゆっくり一歩下がる
くーちゃん、瞬時に同じ距離感に戻る
ホイップ:いつも来てくれてありがとう♡
くーちゃん:そりゃホイップちゃんのためならいつでも来るよ
ホイップ:この前もプレゼントありがとう
くーちゃん:くまのぬいぐるみ、気に入ってくれた?
ホイップ:歌詞覚えててくれたんだね
くーちゃん:ドイツからわざわざ取り寄せたんだ 高級品
ホイップ:(苦笑)
くーちゃん:ほら、早く書いて! 他の人待たせちゃうよ
ホイップ:他の人なんていないよ
くーちゃん:あれ (振り返る)
誰もいない
ホイップ、くーちゃんの手から色紙を奪い取り、
なげやりにサインする
ホイップ:はい、いつもありがとう♡
くーちゃん:ホイップちゃんはこんなに素敵なのにねえ
ホイップ:ありがとう♡
くーちゃん:でも人気出ちゃったらそれはそれで寂しいかも
ホイップ:うふふ
くーちゃん:僕だけのホイップちゃんってのも素敵だもんなあ
ホイップ:うふふ(後ずさり、荷物をまとめて逃げようとする)
くーちゃん:天神の街に突如現れた天使! 渡辺通のビーナス! その決して可愛くはないが愛嬌のある笑顔、肉付きのよい脚、高低差のない胴体!ああ、たまらない!いつでも会える路上ヒロイン、ホイップちゃん!
くーちゃん振り返る
ホイップ:今日はもう帰るね!またライブ来てください!
くーちゃん:ホイップちゃん!待って!
ホイップ:何ですか!
くーちゃん:いいこと思いついた
ホイップ:(おびえている)
くーちゃん:ホイップちゃんを人気者にして、かつ僕だけのホイップちゃんにする方法
ホイップ:(声も出ない)
くーちゃん:僕がホイップちゃんのマネージャーになるよ
ホイップ、逃げようとする
くーちゃん:ホイップちゃん、だめだよ アイドルがそんな重い荷物持ったら ここはマネージャーの僕に持たせて
くーちゃん、ホイップの荷物を奪い取る
くーちゃん:よし!
くーちゃん、走り去る
ホイップ:え
くーちゃん:ちょっと用事を済ませてから戻るね!
くーちゃん、はける
ホイップ:…よかった。ただの泥棒じゃん。
ホイップ、なげやりに自分の歌を口ずさみながら歩く
雑踏は徐々に小さくなる
ドアの前に立つ 鍵を探す
ホイップ:あ、鍵も盗られたのか …あーもう!
やけになって思いっきりドアをゆする…はずが開く
ホイップ:…なんで開くの?
くーちゃん:(台所から現れる)おかえり! ごはんできてるよ! 塩ラーメン!
先ほどと同じ曲が鳴りはじめる
ホイップ:(歌)
くーちゃんは 泥棒じゃなくてマネージャーなの
じゃあどうして かばん盗んだの
くーちゃん:(合いの手)「合鍵作った!」
ホイップ:くーちゃんの名前はあたしがつけたの
くーちゃん:「プレゼントが」
ホイップ:くまだから くーちゃん
くーちゃん:「くまのぬいぐるみ!」
ホイップ:あたしのマネージャー くーちゃん 優しい けれど ちょっぴり変だよ
くーちゃん:「ホイップちゃーん!」
曲がサビ前で唐突に止まる
くーちゃん:あれ? もう練習終わり?
ホイップ:ねえ くーちゃんって普段何してるの?
くーちゃん:ホイップちゃんのマネージャー
ホイップ:違う マネージャー以外に何してるの
くーちゃん:どうしてそんなこと聞くの
ホイップ:だってあたしくーちゃんのこと何にも知らない もう三か月も一緒にいるのに
くーちゃん:…九州大学って知ってる?
ホイップ:え
くーちゃん:知らないか
ホイップ:いや、知ってるよ! 頭いいんだよね
くーちゃん:そうだね
ホイップ:まじで?
くーちゃん:…九大の近くのコンビニで、バイトしてる
ホイップ:なんだあ
くーちゃん:なんだとはなんだ
ホイップ:九大生なのかと思った
くーちゃん:九大生の方がよかった?
ホイップ:あたしは高校も行ってないから大学生とかよくわかんない 未知の生物
くーちゃん:そっか
ホイップ:でもあたしのお兄ちゃんは九大生なんだって
くーちゃん:お兄ちゃん
ホイップ:会ったことないけど
くーちゃん:そっか
ホイップ:なんでって聞かないの
くーちゃん:アイドルのプライベートは聞き出しちゃいけないよ
ホイップ:家にあがりこんでるけど 合鍵まで作って
くーちゃん:(笑う)
ホイップ:…あたしが生まれる前にね、パパとママ、離婚したの お兄ちゃんはパパに連れていかれちゃったんだって だから一度も会ったことない
くーちゃん:…今日はライブする?
ホイップ:しない
くーちゃん:そっか じゃ、帰るね
ホイップ:うん
くーちゃん:お皿は流しにね
ホイップ:今日はカップラーメンだったからお皿ないよ
くーちゃん:カップラーメンのゴミだって洗ってから捨てなきゃいけないの
ホイップ:そうなの?
くーちゃん:ばいばい
くーちゃん、はける
携帯電話の着信音
同時にママが舞台後方に立つ
ママは常に優しく、微笑みながら話す
ホイップ:(電話に出る)ママ
ママ:ひさしぶり 元気にしてる?
ホイップ:うん
ママ:またお金振り込んどいたから
ホイップ:ありがとう
ママ:(無言)
ホイップ:ねえママ
ママ:なあに?
ホイップ:あのね、三か月前から変な人が家に来るようになったの ファンだったはずがマネージャーになって やばいよね、やばいんだけど、けっこう優しいよ 何考えてるかはよくわかんないけど おじさんなのかお兄さんなのかもよくわかんないの 何聞いても真面目に教えてくれないし やばいかな 変質者かな 家にいれるのダメだよね
ママ:すごいわね マネージャーだなんて
ホイップ:うん。マネージャー、だけど
ママ:その調子だとあっという間に武道館ライブね すごいわあ
ホイップ:ママ、あたし変な人を家にあげてるんだよ えっとね、何が変なのかっていうと、そう! 合鍵まで勝手に作っちゃったんだよ
ママ:ナマコはとっても可愛いからすぐに人気者になっちゃうのね
ホイップ:また
ママ:ナマコは私の自慢の娘よ
ホイップ:その呼び方やめてって!
ママ:福岡、いいわね 楽しいでしょう? 楽しいわよね ナマコだけずるいなあ
ホイップ:ナマコって呼ばないで やめて 私はセイコだって
ママ:そうだ、またおばあちゃんが怒ってたわよ アイドルなんてさっさと辞めさせて、セイコを連れ戻せって これ以上家の恥を増やすなって おかしいわねえ セイコじゃなくてナマコだって何回言っても セイコって呼んじゃうんだから おばあちゃんボケちゃったのかしら 「病院連れて行くわよ」って言ったら 「病院行きはお前だ」って おばあちゃん怖いなあ
ホイップ:ママ
ママ:あら、月9が始まっちゃう じゃあねナマコ 元気でね
ママ、はける
ホイップ、くまのぬいぐるみを床に投げつける
気だるげに台所に向かう
お菓子を持ってきて貪るように食べる
呆然とする
くーちゃん突然部屋に入ってくる イヤホンをつけている
くーちゃん:ホイップちゃん大丈夫?!
ホイップ:くーちゃん
くーちゃん:強盗とか入ったりした?! それか泥棒!あ、どっちも一緒か!!
ホイップ:え?
くーちゃん:なんともない? 無事?
ホイップ:うん
くーちゃん:あーよかったー てか何それ!
ホイップ:お菓子、もう空だけど
くーちゃん:これ、一人で食べたの?
ホイップ:イライラしてたの
くーちゃん:もーお肌に悪いよ? しかもこんな深夜まで起きてるなんてダメだよ シンデレラタイム大事にして! あ、分かった イライラしたからくま投げたんだ なんだ~よかった~
ホイップ:くまは投げたけど それが何なの?
くーちゃん:いや~心臓止まったよ 急にガシャンって 鼓膜破れるかと思ったあ(イヤホンをいじる)
ホイップ、くまをもう一度投げる
くーちゃん:あいて!(耳を押さえる)
ホイップ:やっぱり変質者か
くーちゃん:映像じゃないから、音だけ音だけ
ホイップ:盗聴も犯罪
くーちゃん:ホイップちゃんって、セイコっていうんだ 可愛い名前だね
ホイップ:それも聞かれたのか
くーちゃん:どういう字書くの? やっぱり松田聖子ちゃんのセイコ?
ホイップ:違う
くーちゃん:じゃあ大森靖子のセイコか
ホイップ:違う 生きる子
くーちゃん:生きる子
ホイップ:生きるのセイに子どもの子 それで生子
くーちゃん:(指で書く)珍しいね
ホイップ:ほんとはセイコじゃないの ナマコって読むの
くーちゃん:それはもっと珍しいね
ホイップ:…くーちゃん知ってる? 戸籍には読み仮名載せないんだよ だから私はナマコじゃない、セイコでいいの セイコになれるの それにしたって変な名前だけど、でもナマコだけはやだ ずっといじめられた 「ナマコは変だ ナマコはおかしい」って でも、でもね、いじめる子は嫉妬してるんだって あたしが可愛いからだからいじめるんだって 「ナマコは可愛いから仕方ないの 我慢しなさい」 ってママいっつも言ってた …でも、ママだってちょっと変なのかもしれない 高校行かないって言って止めない母親はおかしいって先生言ってた 16で福岡に出て、路上でアイドルするって言ったら おばあちゃんは怒ったけどママは何にも言わなかった でもそれは多分ママが優しいからなんだよ ママはすっごく優しい …でも、でもそれならなんでママはナマコなんて変な名前つけたんだろう どうしてかな
くーちゃん:わかった!
ホイップ:何が?
くーちゃん:だからホイップなのか
ホイップ:え?
くーちゃん:生子、生、生クリーム、だからホイップ!
ホイップ:(しばらく無言、吹き出す)
くーちゃん:笑った
ホイップ:くーちゃんは変だね
くーちゃん:そうかな
ホイップ:でもくーちゃんは優しい ほんとに優しい
くーちゃん:だって僕はホイップちゃんのマネージャーだから
ホイップ:マネージャーは盗聴なんてしないと思う
くーちゃん:そうかな
ホイップ:そうです
二人:(笑う)
くーちゃん:ほら、ちゃんと寝て 寝不足はお肌の大敵
ホイップ:眠くない
くーちゃん:もー
くーちゃん台所に向かう
ホイップ:くーちゃん(くまを持ってささやく)
くーちゃん:(台所から声だけ) なあに
ホイップ:すごい うける
くーちゃん:高性能だからね ドイツから取り寄せました
ホイップ:きも
くーちゃん、一人分のマグカップを持って出てくる
くーちゃん:はい
ホイップ:ホットミルク
くーちゃん:これ飲んだらちゃんと寝てね
ホイップ:うちに牛乳とかあったんだ
くーちゃん:昨日買った ラーメンにいれたら美味しいんだって
ホイップ:えー(飲む)
くーちゃん:おいし?
ホイップ:うん 美味しい
くーちゃん:よかった
ホイップ:くーちゃんは飲まないの
くーちゃん:うん マネージャーだからね
ホイップ:別にマネージャーも一緒に飲んでいいと思う
くーちゃん:ホイップちゃんは優しいね
ホイップ:くーちゃんの方が優しいよ
ホイップ、倒れる
くーちゃんマグカップを持ってはける
ホイップ:….よかった ただの変質者じゃん (起き上がる) 視界が不自然な歪み方をして、私は心底安心した くーちゃんはただの変質者で、私を油断させるためにこれまで優しくしてきて、きっとこれから私は、…そういうことになる 言わないけど もしかしたらついでに殺されるのかもしれない
くーちゃん、味噌とバスタオルを持って来て、ホイップの後ろに立つ
ホイップ:意識が途切れる前、最後に見えたのは味噌とバスタオルを持って微笑むくーちゃんだった …どういう性癖なんだろう くーちゃんって、変態だったんだ(もう一度倒れる)
くーちゃん、バスタオルを頭からかぶってホイップの傍らに座る
先ほどと同じ着信音がなり始める
ママが静かに出てくる
着信音は徐々に大きくなり、
天神の雑踏やノイズと混ざり合って激しく歪んでいく
唐突に無音
ママは先ほどと変わり苦悶の表情
ママ:ナマコなんていらない 嫌い嫌い、ナマコなんて嫌いよ 私はクニヒロが良かったのに(バスタオルをかぶったくーちゃんを示す)かしこくて、優しくて、クニヒロの方が出来がよかったのに ナマコのせいよ 全部ナマコのせい! どうしてどうしてどうして ねえどうして!
…もう一度みんなで一緒に暮らそうよ
帰ってきて、帰ってきて くーちゃん、セイコ
ママ、はける
くーちゃん、かぶっていたバスタオルをホイップにかけ、
味噌を持ち、はける
ホイップ、目が覚める
ホイップ:…ママ? …今のはママじゃなかったけど…けっこういい夢だったな …生きてる
くーちゃん:あ、おはよ~
ホイップ:(後ずさる)
くーちゃん:よく眠れた?
ホイップ:(びびっている)
くーちゃん:ん? どうかした?
ホイップ:あ、あのホットミルク
くーちゃん:あー睡眠薬入ってたんだよ よく眠れたでしょ
ホイップ:眠れたけど
くーちゃん:昨日だけじゃなくて最近ずっと寝てないでしょ くーちゃんなんでも知ってるんだよ 睡眠不足はダメだから、ちょっと手荒だけど今回はちゃーんと眠ってもらいました
ホイップ:なにもしてないの
くーちゃん:うん 起こしたらダメじゃん
ホイップ:なんにもしてないんだ
くーちゃん:あ、やば沸騰してる
くーちゃん、台所に行く
二人分の器と箸を持って出てくる
くーちゃん:はい、朝ごはん
ホイップ:…ラーメンじゃない
くーちゃん:頑張って作ってみたんだ
ホイップ:おみそしる
くーちゃん:この前和食食べたいっていってたでしょ 初めてだからあんまり上手にできなかったけど
ホイップ:…
くーちゃん:ほら、食べよ
ホイップ:….くーちゃん
くーちゃん:ん?
ホイップ:くーちゃんって、誰なの
くーちゃん:ホイップちゃんのマネージャー
ホイップ:違う …違わないけど
くーちゃん:ホイップちゃんのマネージャーだよ
ホイップ:クニヒロ
くーちゃん:だあれ それ
ホイップ:お兄ちゃん
くーちゃん:そっか
ホイップ:…くーちゃんはさ …くーちゃんは、あたしのお兄ちゃんなんでしょ?
くーちゃん:え?
ホイップ:会ったことないから、会ったことないからわかんないけど 絶対お兄ちゃんだ お兄ちゃんだから優しいし、頑張っておみそしるも作ってくれる
それに、こんなに可愛いホイップに睡眠薬まで飲ませて何もしない? え、意味わかんない
くーちゃん:ホイップちゃん
ホイップ:ママがあたしに優しいのはね ママがあたしのママだからで、ただそれだけなんだ、たぶん 何にも関係ない人があたしに優しくしてくれるはずがないもん なんでくーちゃんはあたしに優しくしてくれるの わかんないよ お兄ちゃんなんでしょ だから優しいんだ
くーちゃん:どっちがいいの
ホイップ:え
くーちゃん:ホイップちゃんはどっちがいい? お兄ちゃんがいい? それとも他人がいい? …それか今からホイップちゃんをめちゃくちゃにしてもいいよ
ホイップ:…
くーちゃん:僕はどうしたらいい?
ホイップ:あたしは…
くーちゃん:….おみそしる、冷めちゃうね
ホイップ:…ちょうどいいよ 猫舌だから
二人、テーブルにつく
二人:いただきます
ホイップ、口をつける
くーちゃん:おいし?
ホイップ:まずい
くーちゃんもおみそしるを飲む
顔をしかめ、むせる
二人、顔を見合わせて笑う
溶暗
終
*上演希望の際はmailよりご連絡ください